通関業界と税関OBの癒着について。天下りがもたらすメリット・デメリットとは

(あそこの離れた席に座っているおじいさんは誰だろう・・・)
通関課のフロアで、現役の社員たちとは明らかに雰囲気の違うおじいさんが離れた席にぽつんと座っていた。
新卒で入社した私は怪訝に思い、会社の先輩にこっそり聞いてみた。
「あそこの離れた席に座っているおじいさんは何者ですか?」
先輩は教えてくれた。税関OBだと。肩書きは通関顧問。
万が一大きな通関トラブルが起こった時に、会社と税関の間に入って大事にならないように丸く収めるために雇用しているとのことだった。
(なぜ税関OBが民間企業に雇用されているのか・・・)
それ以来私の疑問は深まるばかりだった。
そこで今回は、「なぜ大手の民間物流企業では今も税関OBを再雇用しているのか」という、あまり世間では話されないタブー的な内容を現役の通関士である私の所感も交えつつお話します。
Contents
なぜ税関OBが民間企業で必要とされるのか?
なぜ企業が税関OBに高い報酬を払ってでも再雇用するのか、企業側にとっての代表的なメリットは次の4つです。
①大きなトラブルが起こった時のための火消し役
民間企業が税関OBに最も期待することの一つが、通関に関連するトラブルが起こった際の火消し役を担ってもらうためです。
税関が定期的に企業の輸出入書類をチェックする事後調査の際に、OBは税関がどこを見るか着眼点を熟知しているため、事前に社内監査や書類不備の修正を行うことができます。
②遅延による金銭的損失を防ぐ保険的役割
国際ビジネスにおいて、荷主が一番恐れているのは貨物が港や空港で止まることです。
部品や商品の通関が数日遅れるだけで、工場のラインが止まり、取引先への違約金が発生するなど数千万〜数億円の損害が出ることもざらにあります。
そうした最悪の事態に備えるために、税関OBを置くことでスムーズに通関できる環境を手に入れることができます。
税関OBの報酬は、労働への対価というより数千万円〜数億円の損失を防ぐための保険とも言えます。
③専門知識の社内還元
税関から優良な事業者として認められる「AEO(認定事業者)制度」を取得する際に厳しい社内管理体制が求められるため、税関OBの知識やノウハウは非常に有用になります。
また、関税の分類や評価など税関と見解が分かれた際、税関OBの豊富な知識と経験を盾に税関と論理的に交渉・折衝することができます。
④株主への免罪符的役割
大手上場企業にとって、コンプライアンス違反による営業停止や報道は株価の暴落を招きます。
万が一トラブルが起きた際に、元税関のプロを顧問に据えてチェック体制を敷いていたという事実は、株主や世間に対して会社として最善の努力をしていたということを弁明することができます。
以上4つになります。
要するに税関OBの主な役割というのは、もしもの保険的役割と体裁を整える手段であると言えます。
ちなみに内閣官房が公表しているデータによると、税関の元部長クラスや税関支署長クラスといった幹部OBは、大手企業や団体に「顧問」「参与」「調査役」などの役職で迎えられているようです。
税関職員OBを再雇用するデメリットとは?
では反対に、税関OBを再雇用するデメリットとは何でしょうか。
それはなんと言っても税関の元幹部クラスを顧問や参与として迎えるため、一般的な通関士よりも高い報酬(人件費)が必要になることです。
あくまでアドバイザーや監査役としての雇用なので、輸出入の申告書作成やシステム入力などの現場実務は一切行いません。
また、法律に則った合法な再就職であっても、不祥事などが起きた際に世間から官民癒着や天下りとして冷ややかな目で見られるリスクがあります。
他にも元公務員の厳格なスタンスが、スピードを重視する民間企業の現場(営業や実務担当者)と衝突し、煙たがられてしまうケースがあります。
汗水垂らして現場で売上を上げている従業員から見れば、現場の苦労を知らず、書類作成や実務もしない元官僚が高い役職や報酬で迎えられている姿はお気楽な天下りと映って当然です。
ちなみにこれは私の実体験ですが、以前勤めていた会社に再雇用されていた税関OBがこんな話をしていました。
今の税関長とは俺は同期だからツーツーだとか、今の出張所長は俺が現役の頃の部下だったから口利きできる。と。
私はその話を聞いて思いました。
なるほど。税関OBとは言ってみればヤクザの用心棒みたいなものだなと。
とはいえ現実問題、大きなトラブルなんて滅多に起こらないし、トラブルが起こったとしても税関OBの力を借りるまでもなく、現場間で処理できるレベルのことばかりです。
結局私が会社に在籍した5年間で、一度も税関OBの出番を見たことがありませんでした。
普段税関OBが何をしているのか気になり、一度だけ後ろからパソコンの画面を覗き見したことがあります。
なんとソリティアをやっていました。笑
それを見たとき率直に私はこう思いました。
業務時間中に同じように机を並べて平気な顔をしてソリティアをやっている人間にも、俺たちが汗水垂らして稼いだ会社の収益が分配されていると思うと納得いかない。
会社の経営陣からすると、税関OBを雇わないことで発生するリスクの方が桁違いに大きいという判断のもと再雇用しているとはいえ、現場で利益を生み出している立場からすると、外から来た税関OBに利益が分配されているのは割り切れない部分があるのは当然のことです。
まとめ
今回はあまり世間では語られない通関業者と税関職員のタブーについてお話しました。
今でも建前では民間企業との癒着は絶対にあってはならないと言っていますが、裏ではちゃっかり民間企業に天下って幅を利かせているのが現実です。
そんな現実を嫌でも受け入れなければいけない現場で働く人間からすれば、冷やかな目で見てしまうのは当然のことです。
とはいえ、税関職員だけを責めるわけにはいきません。
天下りと知りつつ、それを何食わぬ顔をして再雇用している民間企業も同じ穴のむじなです。
利害関係が一致してるということで、お互いが黙認すれば世間で大ごとになることはありません。
もしかしたら今回の話は、私のような一通関士ごときが騒ぐことではないのかもしれません。
しかしそれでも私は、税関OBが再雇用されている企業には勤めたくないというのが本音です。
税関OBを雇うお金があるなら、一円でもいいから私の給料を上げて欲しいと心の底から思うからです。
経済的自立を第一に考えている私にとって、税関OBの再雇用など足かせでしかありません。これが私の結論です。
以上の話を踏まえてあなたは税関OBを再雇用している企業で働くことについてどう思いますか。
もし私と同じように納得いかないと思うのであれば、サラリーマン通関士ではなくフリーランス通関士になることおすすめします。
フリーランス通関士という働き方に興味があればこちらの本をご一読ください。きっと新しい発見があると思います。
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